下顎総義歯の吸着の理論と技術を開発したのは、私が世界ではじめてです。
世界のどこの書籍をしらべても、この「Suction-effective Mandibular Complete Denture]とタイトルが付いた本も文献もありません。もちろん日本でもありません。
私が開発するまで、通常の歯科医師は上の入れ歯は吸着するのが、下顎の入れ歯は浮き上がって当然と考えていました。現在の大学でも同じです。
上顎はほとんど動かない粘膜で構成されているので、義歯が密着すれば外れません。下顎の土手は、舌があり、土手の面積がU字形で狭いので、口を開閉するたびに、義歯が大きく揺すられると、義歯の周囲から空気が入ります。1箇所でも封鎖がうまくいかなければ、義歯はすぐに外れてしまいます。私が1982年に調布に開業した時も、「患者さんに、なぜ上顎に義歯が吸着して下顎は吸着できないのか?」と聞かれ、途方にくれたことが何度もありました。それがモチベーションになり、これまで誰もできなかった義歯の製作法を考え発表しました。私は、誰もが諦めていたこの問題を解決するのに12年費やしました。完成は1999年です。